荒川病院

東京都荒川区にある医療・看護を提供する療養型病院。

(平日/9:00?17:00 土曜/9:00?13:00)

新着情報

心温まるエピソード大賞受賞について

グループ内各施設で職員、患者様、ご家族様との間に心温かくなったエピソードを出し合い、共有することにより職員のモチベーション向上を図っております。
この度、当院から出したエピソードが最優秀賞と優秀賞を受賞しましたので、ぜひ皆さんにもご覧いただきたいと思い、掲示致します。

最優秀賞「深まり続ける2人の絆」

W 施設開設時より入院されている A さんは、大工さんをしていたこともあり、職人気質で気難しい性格の方です。奥様の前では意地を張り「もっと気を利かせて何か持って来い。」と言ったり、我がままを言って怒鳴ったりということもよくありました。 そんな時は奥様も「頭にきたから、口も利かないで出てきたわよ。」と愚痴をこぼしますが、その後には「自分でやりたくても出来ないから、私がやってあげないと他の人には頼めないのに文句ばかり言うんだから。」と話され、その言葉には優しさが感じられました。 ある時、奥様が帰られた後、A さんの所へ行くと「せっかく来てくれたのに悪かったよな。やってもらわないと俺は困るんだよ。」そう申し訳なさそうに話す意外な一面を見ることが出来ました。

A さんが入院してから 15 年が経ちますが、たとえ喧嘩をしても奥様は必ず週 2 回 A さんに会いに来ていました。新型コロナウイルス感染症の影響から、面会が出来なくなって数ヶ月が経過した頃、A さんが突然「今日は電話を掛けたいんだ。」と言うので電話を掛けに行くと電話の相手は奥様でした。「おう、元気か?体調は大丈夫か?1 人なんだから無理したら駄目だよ。体に気をつけて。」A さんはそう言って電話を切りました。

A さんには、1 人息子さんがいましたが、息子さんが 30 歳の時、心筋梗塞で他界。以後入院される前までは、奥様と2人で生活をしていました。A さんは自分が入院したことで、奥様が 1 人になってしまい「うちのに何かあった時、みてくれる人が誰もいないんだよ。」と心配そうに話していました。いつもは意地を張り素直に思いを伝えられない A さんですが、奥様のことを心配して自分から電話を掛けたいと言ったことに込み上げるものがありました。A さんと奥様は気持ちが繋がっているからこそ、短い会話でもお互いを思いやる気持ちで通じ合っていると感じました。

今までとは違う日常が始まり、A さんが奥様に電話をかけている姿を見て、会えない今こそ、2 人の絆は今まで以上に強く深いものになっているのかもしれないと思いました。

優秀賞「声をかけ続けること」

2019 年 12 月 23 日に当院に転院された O さんとスタッフとのやりとりの話です。 O さんは脳梗塞を発症し、失語症がありコミュニケーションがとりづらい状態で入院されました。 日中は、車いすに乗車し過ごされています。意思疎通はとれませんが、声掛けに対してうなずく姿 が見られるので、通りかかるスタッフが声かけをよくするようになりました。「おはようございます。」 など簡単な声かけでした。そういった声かけを続けていくうちに、 スタッフ 「おはようございます。今日はよく眠れましたか?」 0さん 「うん。」 スタッフ 「今日はお風呂ですよ。」 0さん 「あ、そう。」 などと、質問に対して返答が合うようになり、そんなやり取りがうれしくてより一層スタッフが声を かけるようになりました。テレビを見ている姿に スタッフ 「この歌懐かしいですね。知っていますか?」 と聞くと、流れる昔の歌にリズムに合わせて揺れながら、小さな声で歌っていました。それを見た スタッフが「歌が歌えるんですね!」と嬉しそうに話していました。それに対して O さんは「そう。」 と返事してにこにこ笑っていました。それから、スタッフが時間をみつけては、歌を一緒に歌い、 「東京音頭」「茶摘み」など昔の歌を歌うと一緒に歌うことができるようになっていました。 話かけ続けることで、呼びかけに対して返事ができるようになり、俳優の渡哲也さんが亡くなった ニュースをみて、「渡哲也さんの歌知っていますか?歌えますか?」というと、自分で歌うことがで きるようになっていました。今では昔の歌を知らないスタッフが O さんと歌う為に、昔の歌を勉強 し一緒に歌を歌っています。 コミュニケーションがとれないからと決めつけず、声をかけ続けることの意味を実感することができ ました。これがユマニチュード®につながり、自然と実践していたことがユマニチュード®のケアの一端 であり、続けていくことが大切だとわかりました。 O さんとのやり取りを通して、寝たきりでコミュニケーションが取りづらい患者が多い V 施設で、声 をかけ続けることの意義を見出す事ができ、今後の患者ケアに病棟全体で取り組んでいきたいと思いました。

2021年4月7日